経験談

生きづらさを感じる人が語る 経験談

経験談はそれぞれの投稿者の個人的な価値観や感じ方をそのまま掲載しています。一部、リアリティのある描写や強い価値観が含まれるため、読む人にとっては負担等を感じる場合もあります。各自の判断で閲覧してもらえるようにお願いします。

みんな好き勝手なこと言いやがって!

 両親と兄と私と弟の5人家族だった。兄は35歳で突然死んだ。兄の死後、私自身の家族に対する気持ちは急速に変化しだした。
 兄は私が生まれる前に病を患い、治療の後遺症として、てんかんや知的障害を抱えて30数年間生きた。私にとっての兄は、死ぬまで向き合うことができなかった存在だ。両親が死んだら私が面倒見なきゃいけないのかな、でもそんなこと考えるのしんどいから、片方の親が死んでから考えようかな、と口に出したら怒られそうなことを平然と考えていた。
 私の家族は変だったことに、兄の死後、気づいた。両親ともに働き、家にいないことが多かったが、いつも貧乏だった。両親は家にいるときは決まってお酒を飲んでいた。飲まないとやってられへんのや!と父からも母からも、何度も何度も聞いた。
 家は狭く、10坪もない狭小住宅で5人が縮こまって暮らしていた。掃除をほとんどしなかったので、ゴミ溜めのような家だった。夏場にはゴキブリやあらゆる害虫と共存している感覚が常にあった。トイレや風呂は特に不潔で、私は家でトイレに行くのが嫌で、常に便秘がち。小学生の中学年頃まで家の外で大便を漏らしていた記憶がある。
 父は酒が入ると気が大きくなるタイプで、母を相手に「この結婚は失敗だった!もうずっと夫婦生活がない!この生活は苦行だ!」と子供がいる前で頻繁にケンカをし続けた。盗癖(主に家族のお金を盗んでいた)があった兄に対しては、間違った躾だったのだろうが、暴言暴力が週に一回以上は繰り返された。
 今でも覚えている、他人からの言葉が2つある。1つは父の親族から、まだ小さい私と弟を呼び出してこう言った。「お兄ちゃんが病気やから、お父さんとお母さんを助けてあげてね」。幼いながらに、いや、私や弟の方がよっぽど助けてほしいわ!お兄ちゃんにどれだけ苦しめられてるか知らんくせに!お父さんだって酔うと暴れるの知ってるくせに(父は親族の集まりでも度々暴れた)!と心の底から思った。
 もう1つは、私の友人のお母さんの言葉である。私の兄が障害者であることを知っていたのだろう。「お兄ちゃんも、何かの意味があって生まれてきたんやからね」。いやいや!何を知ったような口を!一緒に過ごしたこともないくせに!他人は好きなことを好きなときに好きなように言える!何歳だったか忘れたが、当時の私は憤怒の気持ちを募らせつつも言い返せず、むっつり黙っていた。
 家族自体が異常だということに、私は気づいていなかった。兄だけが障害者で、兄だけがおかしいのだと思っていたから。でも、兄が死んだ後、あれ?なんか私の家って随分おかしいな?と徐々に気づき始めてきた。そうなるともう、家族、特に両親が本当に嫌に思えてきた。そしてそんな両親から生まれてきた自分がたまらなく嫌に思えてきた。
 両親の悪いところをことごとく受け継いでいる自分を自覚すると、あぁ、こんな両親から生まれてきて、なおかつ、こんなどうしようもない自分に育ってしまって、もう本当にどうしようもない存在。死にたい。親も、育てられないなら子供なんて作らなきゃよかったのに!私たち兄弟は全員、子育て大失敗の典型例じゃないか!
 誰か、生きたくても生きられない人がいるのであれば、私よりマシに生きられるだろうから、喜んで代わりに死にます。どんな終わり方だって受け入れる。死に方を選べるような、そんな人間じゃない。
 こんな人生、どうせこれまでもろくなものじゃなかったし、今もろくなものじゃないし、これからもどうせろくなものじゃない。だから、毎日死にたい。

感想1

文章を読み終えてタイトルに戻ると、あなたが長い間溜め込んでいた我慢、怒り、虚しさなど、複雑な感情が温度感を持ってこちらにも伝わってくるようでした。
自分のしんどさが誰にも分かってもらえない・・そんな環境にも、どこにもやり場のない怒りがとめどなく込み上げてくることにも疲れ切ってしまったような、そんな印象を抱いています。

兄について「死ぬまで向き合うことができなかった存在」と書かれていましたが、頭では理解しても感情が追いつかないような、なかなか受け入れ難いことでもあったように思います。
お互いに相応の苦労があったと思いますが、いわゆる「きょうだい児」にあたる関係性でもあったとすると、人知れず不安やプレッシャーを抱えていたように思います。
あなたの中では苦悩の象徴だったような兄が突然逝去し、見えるようで見えてこなかった家族の問題が、少しずつ目の前に立ち現れているのですかね。
その気づきは、自分の中で感じていたことや考えていたことの正当性がよりはっきりとした反面、自分の存在そのものを否定したくなるような刃になって、あなたに向いてしまっているようにも感じています。
また、自分の中の「当たり前」や「普通」が覆っていくことは、恐ろしい瞬間でもあるように想像しています。
(あなたの気持ちと違ったことを書いていたらすみません)

不潔な環境下でも受け入れざるを得なかったこと、大人がお酒を飲んで態度が一変した末に何度も目の前で言い争っていたこと、暴言や暴力でもってきょうだいを制圧するやりとりを目の当たりにしてきたことは、あなた自身もなかなかのダメージを負った経験だと感じています。
それだけでもしんどいところに、大人の無責任な発言や綺麗事が、より一層苦しみを深めたように感じています。あなたの心の声に対して、そう感じるのも当然のことだと私は感じました。

両親の悪いところを「受け継いでいる自分」と表現されていましたが、置かれてきた環境によって影響を受けざるを得なかった部分もあったように思います。
なので、あなたが自分を否定しようとする姿には、なんだか胸が苦しくなるような思いでいます。
そう言われたところで何かが変わるわけではない・・との声も頭の中に浮かんでいますが、あなたのせいではないことまでも背負わないといけないのは、あまりにもやるせないことだと感じています。

こうしてご自身の経験を振り返って言葉にしたことは、あなたにとってどんな時間だったのかなと思いを馳せています。
死にたい気持ちはそう簡単に拭えるものではないと思いますが、またよかったらお話を聞かせて下さい。経験談への投稿ありがとうございます。

感想2

まず、お兄さんが亡くなられたことで、かなりこころが揺れ動いたのではないかと思います。そんななか、経験談を投稿してくださりありがとうございます。
ただでさえ身近な人が亡くなるというのは、いろいろな思いが生じるきっかけになりうると私は考えておりますけれども、投稿者さんの場合、長年感じていたけど表に出すことはなかった思いが、今になってあふれだしている、そういう現状にあるのかなと想像しながら読ませていただきました。

投稿者さんは、お兄さんにずっと向き合えずにいたと感じておられるのですね。その感覚は否定しませんが、経験談の読み手の私としては、向き合っていなかったとは感じなかったことを伝えさせてください(もし不快になられたらすみません)。
というのは、あなたが他人から受けた、脳裏に焼き付いている2つの言葉と、その言葉に対するあなたの感情を読ませてもらうと、その言葉を受けた時のあなたが、家庭と家庭外との隔たりというものを強烈に感じていたように、私には見えたのです。
父親が親類のいる時でも横暴なふるまいをしていたこともあって、親類との関わりには少なからず肩身の狭さがあったのではないかと想像できたのも、私の見え方に影響していると思います。加えて、親類(投稿者さんの言葉で言うところの「他人」)のあなたへの励ましの言葉(励ますような優しい言葉だと、言った本人は思っていそうだなと私は思いました)が私にはまるで、あなたの家庭のことはあなたがなんとかしてくださいと、不可侵の境界線を引く言葉のように見えます。怒りはもちろん心細さも生じたのではないかと想像できましたし、投稿者さんが長年、ご自身も気づかないくらいのこころの奥底にさまざまな思いをしまうことになったきっかけとなる、それくらい影響力の強い言葉だったから、あなたの印象に強く刻まれているのかなと考えます。
…いろいろ書かせていただきましたがまとめると、投稿者さんにはお兄さんと強制的に向き合わされることへの不快感があったのかなと思いますし、向き合いたくないという気持ちもあったのかもしれません。だけどそういう気持ちが置き去りにされてしまうくらいには閉鎖された、まるで内からも外からも鍵をかけられたような環境に、投稿者さんが身を置かれていたように私には見えました。その環境にいたあなたがお兄さんと向き合っていないとは、私は感じなかったのです。

ただ、私としては、繰り返しになってしまいますけれど、投稿者さんがお兄さんと向き合えなかったと感じる気持ちを否定する気はまったくありません。むしろそういった罪悪感(と、今回は表現します)を抱かれるのも、感情の流れとしては理解できるなと私は感じます。だけど、他の誰かが、「お兄さんと向き合えなかったと感じている」という一側面だけを切り取って、あなたのことを糾弾するようなこと(「もっと向き合うべきだった」とか「面倒を見なきゃいけないのかなとか感じてたなんて薄情だ」とか、そういうことを言われる場面が、悔しいですが思い浮かんでしまいました)、そんなことがあってはならないと私は感じました。

あなたの気持ちの変化(というか、実体化みたいな)が大いにあったことがよくわかったので、他の家族それぞれにも何か変化があったり、家族との関係性も変わっていく最中にあるのかなと想像します。もしよければ、そういう変化を言葉にするということを続けていただきたいと、勝手ながら感じました。
改めて、経験談の投稿ありがとうございました。

お返事1

家族にも、誰にも言うことのできなかった思いを感情のままに書き起こしたため、ひどい文章で失礼いたしました。
しかしながら、感想をいただき、素直にとてもうれしかったです。
自分の昔から今までの苦しい思いを、否定することなく受け入れてもらえた気がしました。
こんな気持ちは初めてです。ありがとうございました。

一覧へ戻る