経験談

生きづらさを感じる人が語る 経験談

経験談はそれぞれの投稿者の個人的な価値観や感じ方をそのまま掲載しています。一部、リアリティのある描写や強い価値観が含まれるため、読む人にとっては負担等を感じる場合もあります。各自の判断で閲覧してもらえるようにお願いします。

憧れの裏で

私は大学2年の11月から3年の11月まで大好きな場所でアルバイトをしていました。今回はそこでの1年について話させていただきます。
私にアルバイト採用の電話があったのは大学2年の11月のことでした。新しくアルバイトを始めるにあたり私は一度不採用となった企業の違う場所のアルバイト募集に意を決して応募しました。面接は手応えあり、でもなかなか電話がかかって来ず諦めたのを今でも覚えていますし、友達と遊びに出掛けていた時にかかってきた採用の電話、あの時の嬉しさは今でも忘れることはできません。
勤務初日、研修を担当してくださったのは男性社員さんでした。その社員さんは他の社員さんとは少し違っていてとても関わりやすいタイプの方でした。
その方がある日のバイトの閉店作業中、「明日モーニングコールしてくれない?」と声をかけて来られました。次の日は通常業務とは違い、大変な作業があったのでアルバイトもパートさんも社員さんも早く行ける人は早出勤しなければならない日でした。私は私が起きるついでだからと思い「全然いいですよ!」と了承しました。
次の日約束通り私が起きた時間にその社員さんに電話をしました。それから、もしかしたらその時から私のアルバイト人生は変わっていたのかもしれません。
その日、バイトが終わり大学へ向かう時、男性社員さんも外出するようなそぶりを見せました。私は1人が好みなのもあり一緒に帰るのはなあと思い、時間をずらし、トイレに行ってから店を出ました。すると店の玄関の外でその男性社員さんが待ち伏せをしていました。元々は違っていた休憩時間をわざわざ私が出るタイミングにずらしたのです。そして一緒に駅まで20分ほど歩いて行くことになりました。駅にはカフェがあるのですが、朝起こしてくれたお礼ということで奢らせて欲しいと言われました。正直早く別れたかったのと申し訳なかったのでいいですと断りましたがいいからと言われ奢っていただきました。すると別れ際にLINEを交換したいと仰りました。社員さんだったので断れず了承し交換したところ「こんなに可愛い子とLINEを交換できるなんて嬉しいなあ」「彼氏候補に立候補しようかな」と仰られました。それから頻繁にLINEは来るようになり、少し返信しなければスタンプが送られるようになりました。ワースケは社員さんが作られているので、業務中には何かと2人きりになり、手を握る、足を触る、頭を撫でるなどボディータッチが増えていきました。しかし私は笑うしかできませんでした。
しばらくすると二人きりで会いたいと言われ、男性社員さんは私の家からは遠いところにお住まいだったので駅のカフェなら断ってくると思い、カフェでと言うと了承され、会うことにしました。その時にも手を握るなどのボディータッチがとても多く、私は「これからの用事に備えてお金を下ろさなきゃならないから帰ります」と言いました。すると社員さんは徐に5千円を手渡してきて「これ渡すからもっと一緒にいたい」と仰りました。私は怖かったものの社員さんの頼みであるため断れず、それからも一緒に過ごし、少し早くに間に合わないということにし、別れることにしました。その時、次は別の場所で会おうと約束までしました。
私はもう怖くてアルバイトに行くのも嫌になっていたので、親しくしていただいていた先輩に相談することにしました。すると「それはセクハラ」と仰って女性社員さんに相談した方がいいと言われたので女性社員さん2名の方に相談させていただきました。すると大企業の直営店舗で働いていたため、ハラスメントに対応する部署があり、その存在を教えて下さってそこに電話するようアドバイスをして下さりました。家に帰り早速電話してみると最初は男性の方が対応されたので不安でしたが親身に相談に乗って下さり、次に女性の方から電話があり、その方もとても親身になって下さりました。その方から店長の方にも話が行き、店長も男性の方だったので不安でしたがしっかりと対応して下さりました。ワースケは店長がチェックしておかしなところがあれば修正してくださったり、店長との話し合いをちょくちょく入れてくださったり、社員とアルバイトの個人的な連絡は断つよう周知してくださったりとたくさん働きかけて下さりました。デパも違うデパに移してくださって、私は5千円をしっかりお返しし、貸し借りがないようにしました。するとその男性社員さんからのLINEも止まり、セクハラ行為もなくなりました。
私は体調が優れなかったのもあり、在籍中の半分ほど休職していたのですが、それもあり次第に距離が取れるようになりました。
今は体調面が影響して退職しなければならなくなりましたが、男性社員さんも違う店舗へ配属となりました。
私は今でも思い出すことがあります。そして自分を責めることがあります。あの日、モーニングコールさえしなければあんな思いはしなくて済んだんじゃないか、憧れの場所が一瞬でも恐怖の場所に変わった事実。全てにおいて断れなかった自分のせい。私が悪かったんだと今でも思い出してはなんで断れなかったのかと後悔します。一生の傷を憧れの場所でつけられた悲しさは消えることはありません。あの時の恐怖も忘れることができません。私はあの時の全てと自己嫌悪を抱えてこれから先も歩んでいきます。

感想1

私は女性なので、自分がもし同じことをされたら…という想像を浮かべながら読みました。まずは気持ち悪さとしんどさを感じ、同時に第三者目線での「なんて酷いセクハラなんだ…腹立たしい」と怒りが湧きましたが、一方で、私でもうまく断れないかもしれないし自分を責めるかもしれない…とも思いました。
そして、どうして断れないのか、どうして自分を責めることまでするのか、あなたと私の理由が一緒かはわからないのですが、不思議に思って考えています。

断れない理由としては、あなたが書いたように、社員ーアルバイトという力関係があるとは思います。今芸能界などでも話題になっていますが、仕事において選ぶ(採用する・管理する)立場にいる人からの誘いを、選ばれる立場にいる人が断るのは怖さがあると感じます。相手の機嫌を損ねたら、自分の立場は悪くなるのではないか、、と思うからです。
また、自分に好意を抱いており、かつ距離感がバグっている(と私は思いました)男性相手に強く断るのは、逆上して何されるかわからない怖さを私なら感じます。あなたは何度も自分なりに精一杯のNOを示していると私は思ったので、断れなかった=「意思表示が十分ではなかった」というよりは、相手の「意思表示を受け取る力が不十分だった」の側面が強いと私は感じました。
また、最初のモーニングコールさえ断っていたらその後はなかったのではないか?という想定をあなたはしているのかなと読み取ったのですが、その男性社員はもしモーニングコールを断られても、今度は違う手を使ってあなたと距離を縮めようとしていた可能性も高いように私は思います。

過去の経験談も読み、「自分のせい」とあなたが考えるのは、これまで染みついてきた思考のクセみたいなのも根強いのかな…とも感じました。
何のせいなのか、その選択は本当に自分の意思でやったものなのか(本当は、恐怖でそうせざるを得なかった、自分でコントロールできないものだったのではないか?)というのは、自分だけで考えても、あまり正しい答えが出ないと私は思っています。だから、その問いをもっとみんなで考えられる社会だったらいいのに…と私は思います。
例えば、断る力、人と適切な距離をとる力は、安心が守られた環境にいることで身につく力であるように私は感じます。モーニングコールのお願いの時点で、その男性社員は不適切な距離をとってくる人だと私は感じますが、それはこれまできちんと距離を守られて育ったから見分けがつくのだと思っています。

その中で、周りに相談し、適切に守ってもらえたことには、勝手ながらほっとしました。でも、それで「憧れの場所が一瞬で恐怖の場所に変わった」ショックが消えるわけではないので、セクハラは罪深さを改めて感じましたし、あなたは何も悪くないのにどうして…?と悔しくなりました。
悲しさや恐怖、そして自己嫌悪も、完全に消えることはないかもしれません。でも、こうやって表現してもらい、出来事やあなたの気持ちについて一緒に考えることで、違う見方や感情、もしかしたら何か気づきなど、生まれるものもあると私は思っています。(それがあなたの救いになるかはわかりませんが……)
投稿ありがとうございました。

感想2

経験談への投稿ありがとうございます。

時系列のリアルな描写で書かれた経験談…。
意を決して応募して、受かった時のキラメキ。でも、ある日を境にどんどんどんどん恐怖へと変わっていく感じ…。
個人的には、男性職員の徐々にあなたに詰めていく感じや、相手に不快な気持ちをさせまいというあなたの良心と新人という立場に付け込んで選択の余地を与えない感じにウっと気持ち悪いような感覚と、ゾワゾワ、ドキドキする感じが個人的にはしました。
改めて、読んだ後ではあるのですが、未だに私自身もドキドキしています…。

実際に体験したことがない私ですら情景が浮かんでとても恐怖に感じたので、当事者であるあなたにとっては私が想像できないくらい怖い出来事だっただろうなと思いました。そして、タイトルにも「憧れの裏で」とある通り、自分が働くことに期待と希望をもって決まったアルバイト先だったと思うので、そのキラキラした場所が、ある男性職員の行動によって、恐怖を感じる場所、行きたくないと感じるような場所になってしまったことはあなたにとっては、さぞ悲しかった、つらかった出来事だったのではなかろうかと思いました。

でも、ご自身を責めてしまうことがあるとのこと…。
個人的にこれに対して「なんでこんなに苦しまされた上、もっと投稿者さんが苦しめられないといけないのか…」となんだかもどかしいような、悔しいようなそんな気持ちに勝手ながら感じてしまいました。
私なら、憧れの場所にやっとの想いで働くことができたのなら、やっぱりそこで働き続けたいと強く思うと思います。だからこそ、仕事を覚えたり、仕事をしっかりこなそうとしたりするだろうし、加えて上司や周りの人との人間関係はうまくやらないとと思うだろうなと私自身は思いました。
だとしたら、この憧れの職場で働いていくためには、接しやすい男性職員はあなたにとって仕事を教えてもらう、円滑に仕事をしていくための大事な「職場の人」だっただろうし、その職場である程度の立ち位置にいるその人とあまりギクシャクしたくないと、その男性職員のお願いや、行動に対して断るのはするのはとても難しいことのように感じました。(私が投稿者さんと同じ立場だったとしたら、私も色々怖くてできないと思いますし、悔しいとは思いながらも言えないまま退職していたと思います…。)
だからこそ、私は投稿者さん自身は悪くないように思いましたし、最終的に相談することもすごく不安や怖さはあっただろうと思うので、「すごく怖かったですよね。大変でしたね…」と声をかけたくなりました。そして、同じような被害にあわれている方がこれをみたら、私も相談してみようかなと勇気づけられるような気が勝手ながらしたところです。

改めて、この経験談を書くうえで嫌な気持ちや感覚など色々思い出してしんどかったのではないかと個人的に思っています。そんな中、こうやってここに投稿してくださり感謝の気持ちでいっぱいです。経験談への投稿ありがとうございました。

感想3

「憧れの裏で」というタイトルがとても目を引くもので印象的だったので読ませていただきました。期待や希望がこもった退屈や日々の鬱屈が裏返る予感がするものだったのが、突如として恐怖の場所に変わってしまったことは、つらいの一言などでは到底表せられない程の体験であなたの心に深く傷を残すものだったのだろうなと想像しています。

比べるつもりももちろんありませんし、経験として語ることすら烏滸がましいのですが、私自身も「憧れの場所」で就労を伴う形で携わり、絶望(というよりは理不尽や不条理を味わったが近いかもしれません)した経験があるので、それほどどんな人と一緒に関わるかやどんな体験をするかはいい意味でもわるい意味でも、後の自分に大きな影響をもたらしうる重要で大切なことであると私は考えています。

恐怖はもちろん、後悔や自責の念もいまだとても強く感じられているかと想像していますが、結論から言うとあなたには非も落ち度も何らないとハッキリと伝えたくなった私がいます(おそらくこの経験談を書くにあたって、つらい気持ちを思い出しながらというところもあったのかなと感じられたので敢えて言わせていただきました)。

人間関係の営みには交友関係や恋愛、先輩後輩や家族などなど、ここに書ききれないぐらいの関係性があると思いますが、そのどれもがお互いにリスペクトや対等性を持って初めて正常に成立しうるものだと私自身は考えています。それで言うとあなたへの「好意」という形で先輩社員はあなたに対してのアプローチをしたのかもしれませんが、あなた自身が自分を「アルバイト」、男性を「先輩社員」として表現しているように、そこにはお互いを一人の人間同士として(先輩社員が)向き合ってあなたに伝えられたものではなく、社員とアルバイトという力の発生する立場を利用して、先輩社員があなたに対して半ば強引に自分の感情を押し付けてきたように私には思えてなりません。

また、そういった先輩社員の言動に対してあなたは随所で拒絶や断わる意思を持っていたにもかかわらず、それを表現できなかったことは決してあなた自身の伝える力の強さの問題ではないように私には思えます。というのも「好意」という一見するとポジティブな気持ちと捉えられがちな外殻に自身の欲求や願望を押し込んで相手にぶつけ、仕事上の立場の違いが発生しうる関係で選択肢や退路をあなたに与えようとしなかったことは、とても独善的で利己的な暴力性を伴った気持ちの押しつけにしかなり得ないと私は思うからです。

そしてもう一つ付け加えるとするならば、今の社会や風潮ではどこかセクハラといった被害の話は当事者間で決着をつけたり、そもそもそういった加害を受けないように普段から「自衛すること」を意識させられられることが語られたりなど、謎に自己責任的なことを問われることも問題であるように私は考えています。仮にそういう意識を普段から持っていたとしても、起こるときは自身の想定や判断を超えて起こると思いますし、被った側がその傷を引きずりながら「自衛の意識」を問われるのはあまりにも酷であるし、甚だ疑問に思えて私はなりません。もしかしたらそんな社会や世間の無言の圧力のようなものも、あなたが「あのとき断われていたら…」と思わされることに拍車をかけていることもあるのかなと私には思えました。

ただ、そんな中でも職場の先輩に伝えて「それはセクハラ」と言ってもらえたこと、そして色々な人を通して職場でもそういう(セクハラとしての)扱い・理解として捉えられ、先輩社員に対して相応の対応が取られたことは、あなたが嫌悪感や拒絶の意思がありながらもとった行動が他者から見て客観的に正当に受け止められたことに他ならないと思いますし、あなた自身が「断われなかった自分のせい、私が悪かった」などと決して思わなくていい反証のように私は感じました。

憧れの場所で受けた傷はすぐに、そして簡単には払拭できるようなものではないのかもしれませんが、同じにしてもまた別の憧れる場所にしても、その時のあなたが自分の心に素直に率直に従えるように、これからの日々で少しずつでも受けた傷が癒えていくことを勝手ながらに願っています。

投稿ありがとうございました。

お返事1

私の拙い文章から必死に想像やイメージしてくださったことがすごく伝わり嬉しく思いました。
特に私が印象に残ったのが、感想2の方が書いてくださった「同じような被害にあわれている方がこれをみたら、私も相談してみようかなと勇気づけられるような気が勝手ながらしたところです。」という文章です。
私自身、男性社員の方から好意を向けられている時、勇気が出ませんでした。ですが五ノ井里奈さんにすごく勇気づけられて救われて私も声をあげようと思い意を決して相談しました。もし私の経験談が何かしらの役に立つなら、誰かの背中を押すことができるのならと思い経験談の掲載を受諾させていただきました。
精神的虐待にしろネグレクトにしろセクハラにしろ(実は中学生時代に顧問からのパワハラにも遭ってます)どれをとっても声を上げられない上げにくい世の中だと思います。私が実際にそうでした。幸い、私は援助につながることもできたし、家を出ることも精神科にかかることもセクハラから助けてくれる人もパワハラだと認め謝罪してくれた先生もいました。でも、世の中そんなに綺麗ではありません。私は恵まれています。今で言ったらフジテレビの問題。私なんかよりももっと凄惨な目に遭わされる人がいて声を上げられずに耐えて隠れるように息をするのに必死な思いで生きている人がたくさんいると思います。そういった人が少しでも減るように、死にトリのような活動に私は期待したいし、私も力になれることがあるなら全力でこれからもなっていきたいと思います。

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