のびアート

部屋に入るなり
君はベッドに倒れ込んで
突っ伏して 泣いた
コーヒーカップが倒れて
ぐちゃぐちゃなミニテーブル
真っ暗な夜、動けなくなった君
穏やかな波の音が
カーテンの向こうから響く

君の手が、僕にそっと触れる

僕は
効き目のない抗不安薬なんだろう
でも
君は、いつも泣きながら、
僕を抱きしめてくれる
僕の名前を、口の中で小さく繰り返して

「しにたい」
そうつぶやく君を
僕は救えるのかな…
波の音に君の嗚咽が混じって
いつも自信が綺麗に消えちゃう

…だけど、
ううん、ずっと、救いたいんだ
効き目がなくたって、
本当はそんなこと、どうでもいいんだ
僕は、君が大切

だから
ここにいるよ
人間ではないけど
話すこともできないけど
頼りないことは分かってるけど
君が僕を抱きしめてくれる限り
僕を必要としてくれる限り
いつも、そばにいるよ

ふわふわな身体を、頼りないなって、
自分で嫌ってたけど、
僕の毛皮は、君が毎夜眠るために
何か、役に立ってるんだね

人間でない身体を、頼りないなって、
君に申し訳なかったけど、
この僕の姿は、君が毎晩涙を見せられる
安心できる姿なんだね

僕は、僕で嬉しいよ
そして、
君にも、自然体でいて欲しいんだ
誰が何と言ったって、
君は、一生懸命生きているよ

君の涙を吸い取って、夜が明けて
また、海の見える窓辺で
君の帰りを待つよ

人知れず
ぐちゃぐちゃに傷付きながら
ボロボロに壊れながら
生きている君を
僕はちゃんと知ってるよ

今日も
「おかえりなさい」を
君に言いたい
いつもと変わらない
とぼけた顔で
君の痛みを
聴いていたい

『stuffed toy』

ペンネーム : 桜羽
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