硝子ケースの中に悲しみが一つあった
飲み込むのは全てと 済し崩しの実像だけ
ブランコ上の星々達は メランコリーな誘惑をする
日々を嘆き 変えられない今に打ちひしがれる
それも俺だとふと気付いたんだ 曖昧なままに
儚い茨のツルと棘に 腕を晒したまんまだが
怪我して血が出た足だからか 前へと進むこともできやしない
黒い影が俺の腕を引いては「お前のせいだ」というんだ
人っ子一人いないな 漆黒の空は高くそびえたつ立つ壁のようで
やさぐれた俺の頬を一筋濡らすだけ
それでも 延々 蔓延るのは焦燥の刃と空白だけ
でも醜くないほうがいいんだろう?
子犬が一匹いたのだ 惑う間もなくそこに
段ボールの敷居を抜け 俺に助けを乞うたのか
怪しい光に 飼い主も捨て 掻き消して
電灯の下のブランコに 明るさ見出し導かれた
俺を問えるのは自分だろう 怪しい奇譚の中を歩いていただけなのか
世の中 「禍福」の「福」を見てるだけで片付くのかよ
甘い汁を吸う誰かさんと 虹の麓の狭霧だけだ
この世に背を向けること それが唯一の助けなのか
ああ何を捨てて何を拾うのか 懊悩吹き荒ぶ夜の俺はピエロ
泣く事しか今はできないのだ 暗い高架下に寄りかかって
電灯の影の下に蕾が一つ 脳裏にふと思い出すのは
過去との決別への願い ただそれだけなんだ
トタン屋根さえ穿つ雨 くぐもる雨音が耳を奪った
強まるだけで速まる心臓 遠くの稲妻の音が心地いい
森深くの夢に居たか あの幽霊に挨拶したいくらいだ
今、「同じ心境ですから」と