のびアート

さらわれた

ある日の晩、ケビンは大慌てで友人のリチャードに電話をかけた

ケビン「大変だ、さらわれたよ」
リチャード「何だって!?誰が?」
ケビン「僕がやっちゃったのさ」
リチャード「君は人さらいをしたのか!?」
ケビン「まさか、そんなことするもんか」
リチャード「でも、さらわれたんだろう?」
ケビン「ああ、たったいま、さらわれたんだ」
リチャード「君は今、何をしてるんだ?」
ケビン「さらわれちゃったからね、後始末が大変なのさ」
リチャード「後始末だと…いいかケビン、君は大変な過ちを犯したんだぞ」
ケビン「わかってるよ、だから君に電話しながら、後片付けしてるんじゃないか」
リチャード「ケビン!!自分が何をしたか分かってるのか!
君は人を誘拐して、そのあげくに…ああ、何てことを。ケビン、お願いだ、自首してくれ」
ケビン「冗談じゃない、なぜ、さらわれたくらいで、自首しなきゃならないんだ」
リチャード「落ち着くんだ、ケビン。君は取り返しのつかない罪を犯したんだ。きみという友人を失うのは悲しいが、これまでだ。頼む、自首してくれ」
ケビン「よしてくれよ、きみこそ落ち着け。明日、新しいのを買ってくればすむことさ」
リチャード「ふざけるな!命がデパートで買えると思ってるのか!」
ケビン「命?なんのことだ?そりゃあ、食器売り場に命は売ってないさ」
リチャード「頭が混乱してきた…ケビン、もう一度説明してくれないか、何が起きたんだ?」
ケビン「きみもそそっかしいなあ。さらわれた、と言ったじゃないか」
リチャード「だから、誰が…」
ケビン「さっき夕食が終わってね、洗い物してたら、皿を落っことして割っちゃったんだよ。久しぶりにやっちゃったものだから、気が動転してね、ついきみに電話しちゃったのさ、『皿割れた!』ってね」

リチャードは翌日、熱を出して仕事を休んだ

出演:ケビン、リチャード、割れた皿
作:友

さらわれた

ペンネーム : 友さん
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