のびアート

私の心を蝕んで 醜く肥える海月が
からだの傷のみ取り去って自然な治癒をこれっぽっちも許さない
あったはずの痛み 確かに流れた血はすぐ跡形もなく
輪郭も色もない恐怖と悲しみは 脳奥にくっきり彫られていくのに

裂かれた肌 見えぬ傷は
地についた足 浮かぶ魂は
感じた痛み 思い出せない無念は

私はその間に虚しく、
存在すると言えぬほど曖昧に
ただ まだ そこに あるはずなのに
唯一 私の外殻を撫でる触手

涙が涸れている 口角が蠢く
もみくちゃになる心が海月の養分だった

海月

感想1

読みながら初めに、「深海」のイメージが湧いてきたような気がしています(なんとなくではありますが…)”自然な治癒をこれっぽっちも許さない”というのが個人的には印象的で、自然治癒という言葉や現象が確かにあることとは反対に、それを許されない・起こらないことの残酷さや無力感を抱いた感覚がありました。ふわふわ漂う海月が、ただそこにいるだけのはずなのにそうじゃなく、この作品の中では、おぞましい”何か”が、起きている瞬間でもあるのかと想像しました。

感想2

どことなく厳しいイメージの漢字がつらなる言葉の中に、いくつかのひらがなの箇所が、そこだけ柔く温度を持っているように感じました。「からだ」「ただ まだ そこに あるはずなのに」「もみくちゃになる心」くらげは人間のからだとは違って、神秘的にも思うしすこし不気味に思うこともある。くらげはどこにいるのだろう。「私」の中に「私」とともに生きているのだろうか。

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