底のないコップに
オレンジジュースを注ぐ
穴の空いた風船を
一生懸命膨らます
傘をちゃんと準備したのに
雨の中を濡れながら
歩くカーテン越しに
夜空を眺めて
明日が来ませんようにと祈る
ずっと家にいるけど
帰りたくなるんだよな
満ちていくはずなのに
ずっと底が見えるんだよな
コップに注いだ炭酸の泡を
音が消えるまで数えている
どこにも出かけないのに
ワンピースを着て
アイラインを引いている
疲れ切った体のままで
明日を駆け抜けようとして
擦り減らしたままの心で
だいそれた夢を描いている
笑顔になりたいのに
笑顔を忘れていく
愛されたいから
まずは私を愛することにした
不安は私を抱きしめて
希望は私を突き放す
笑える時間は短いのに
寂しい夜がとても長くて
静かに灯るベッド横のランプ
私の思考は黙ってくれないの
嘘でも楽しいと言えない日には
本当に楽しい夢を見たい
感想1
どこかちぐはぐであべこべで、ままならない日々を送っている人の詩だと思いました。この毎日はけして明るくなく、落ち着かず、満たされず、不安が纏わりついているけれど、まだ安らぎを諦めていないような静かな息遣いを感じました。不器用な行動も、矛盾した気持ちも、とめどない思考も、全てをじっと見つめているような、同じようなものを抱えている私すらも見通されているような気がしました。
感想2
コップを満たしたいから、風船をまあるく膨らましたいから、ジュースや空気がこぼれても、このひとはそれをしたのでしょうか。それは諦めの感覚と願いや祈りが同居した行為のようにも感じました。私もずっと、どこかに帰りたい気がしています。どこになのか、家に、自分に。引き裂かれる感覚が、だけどぎりぎり裂かれきらないまま、詩の中に地続きに存在しているようん思いました。