のびアート

他人は、どうしようもない。
それ以上に、自分がどうしようもない。
生きているだけで、迷惑をかけている。
だから許しを請い、贖罪をする。
眠れぬまま祈り続け、救われぬまま朝を迎える。

人は生きているだけで、罪深い。
自分の正しさを疑わず、声なき者を虐げる。
環境も生態系も貪って、いずれ地球を喰い尽くす。
間違いに気付いても、改めることなどしない。
遅かれ早かれ、死ぬしかない。

普通の人の社会で、普通でない自分は迷惑をかけている。
「普通にしてよ」、「普通ならできるよ」。
他人の声に怯え、顔色をうかがう。
嫌われまいと、普通になろうともがく。
普通を演じて他人に接し、くたびれ果てて自分から逃げた。

普通になれない自分は、歪な存在だった。
どこにも馴染めず、誰からも嫌われた。
自分を責め、他人に怯える。
自分の声を無くし、感情を見失う。
普通に、殺されてゆく。

まわりには、楽しげな世界が広がっている。
他人が手にする当たり前に、手を伸ばし背伸びした。
そんな自分の振る舞いを、他人は奇異な目で笑う。
他人と自分の異和は埋まらず、自責と恨みばかり溢れる。
内罰と殺意は、同じ場所で生まれる。

「理解して支え合い、共に暮らしましょう」。
「多様性を受け入れましょう」。
普通の人の寛大な愛で、普通でない自分は生かされている。
差し出される愛をただ貪り、這いつくばって生きている。
自分の無能を許されると引き換えに、他人の嘲笑を許していた。

ふざけるな。

異常性を謳え。
苦しみを叫べ。
他人に認められる必要なんてない。
どうしようもない僕はどうしようもないまま生きてやる。

死にたいと僕は言った。
死にたいと君は言った。
吐き出した声が明かりを灯す。
世界の果てで僕らは悲鳴だけを共有した。

世界なんて間違っている。
ぼくらは僕らの声を上げる。
そして僕らの場所をつくろう。
ぼくらは僕らを生きてやる。

「アブノーマライゼーション」

ペンネーム : しずかなながれ
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