のびアート
パリの夕暮れ お客「やっパリ、パリ製のシャツは、パリがノリっときいてて、品質がいいねえ」 店員「お客様、『ノリがパリッときいてて』の間違いではございませんか」 お客「わはは、そうだね、ビン違いしていたよ」 店員「『カン違い』ではございませんか」 お客「わはは、とにかく、このシャツをもらうよ」 店員「では、あちらのレジでお会計を」 お客「なぜ金を払わねばならんのだ」 店員「なぜって、お買い上げでしたら、お支払いいただかないと」 お客「わたしは買うとは言っていないぞ、『もらうよ』と言ったのだ」 店員「お客様、それはビン違いですよ」 お客「『カン違い』の間違いではないのかね」 そこへ、突然、酔っパリいが乱入してきて、シャツを踏みつけて靴跡をつけてしまった 「おっ、すまねえ、パリぃことしたな、じゃあ、あばよ」 お客「見たまえ、シャチが汚れたじゃないか、どうしてくれるんだ」 店員「シャチじゃなくてシャツですよ、あなたが悪いんでしょう」 お客「なるほど、きみはたいそう気前のいい店員だ」 店員「どういうことですか」 お客「わたしが汚れたシャツを指さして『どうして、くれるんだ』と聞いただろう。そしたらきみは、『あなたが悪いからですよ』と言った。 わたしのせいで、売り物のシャツが汚されたにもかかわらず、それをわたしにくれるとは。きみはパリだ、もとい、リッパだ。きっと出世するよ。このシャツはパリがたくいただいておこう。これからも頑パリたまえ」 お客は酔っパリいの靴跡のついたシャツを着て去っていった その後ろ姿は、まるでシャツを着たシャチのようであった 出演:お客、店員、酔っパリい、ノリがパリッときいたシャツ 作:友

パリの夕暮れ

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