父親が亡くなって4ヶ月半経った。それは私がまだ高校三年生になったばかりの日だった。
ただでさえ「多感」と言われるこの時期に、父親を亡くすことは割と心身にダメージを食らわせるもので、ただただ辛い。
父親がガンになったなんて、同年代の友達には誰にも言えないし、理解してくれるような人も当然少ないから、一人で抱え込むしかなかった。そんな私もガンだと気づいたのは死の1ヶ月ほど前。母親が父親の部屋を整理し始めた時からだった。
入退院を繰り返しながらも元気に振る舞う父と、何もないかのように過ごす母。父に何かあったとしても、心の弱い私には言わないでほしいと前から言ってあったので、知るのが遅かったのは自分の責任でもあると思うけど…。
もう家に帰って来ないと分かってから本当に帰って来なくなるその日まで、辛くて辛くて仕方なかった。死を待つしかない父を思うと、なんと表していいかも分からなくて。
家の中ではみんな不自然に元気に振る舞う。父の話題は自然と出ないようになった。出したら不安が止まらなくなるかなと思って。
残された時間の少ない父へのお見舞いに、勇気がなくてなかなか行けなくて、部活のせいにしてあまり行かなかった私。どこに入院しているかも知らなかった。勇気を出して母親について行ってみると、行き先はがんセンターだった。
どういうこと?
がんセンターに連れていかれても、まだ受け入れられなかった。何を治しているのかな?とさえ思っていた。
「お見舞いに行けるうちには行っておきなさい」なんて、普段言わない母の口からそんなことを聞いた時、変な感じがした。
あ、これ、本当に?
それからは毎週行くようになった。毎日はとても、弱っていく父を見るのが怖くて、何もできない自分が嫌で行けなかった。お見舞いに行っても、泣かないようにするためにずっと我慢して笑顔でいなきゃいけなかった。
父親が最後の入院をして1ヶ月経った頃、一人で行くのは怖いから、と担任の先生についてきてもらった。病棟が変わったと母に来ていたので、その階へいった。
緩和ケア病棟だった。
やけに静かでやな感じがした。病棟の中で飲み物を買いに行ったら、亡くなった人が部屋から運ばれていたのを見た。自分の父親もいつかそうなるのだろうか。そのいつかは、そんなに遠くない、と思ってしまった。
だんだん会話もままならなくなってきた父、でも私は頑張ってるよということを伝えに、病院の行き帰りは泣きながらお見舞いに行った。
亡くなる前の日のお見舞い、いつもより元気のない父親がいた。聞くと、「苦しい」と。
だんだん大騒ぎになってきてナースコールを押したり、酸素マスクをつけたり、人が出たり入ったりして…。あえぐような呼吸をする父親に必死に手を掴まれ、今までに言われたことのないことを言われた。
「愛してるよ」「ごめんな」
そんなこと言わないで欲しかった。
幸い、落ち着いたらしく、私は家に帰った。
次の日、塾にいたら連絡がかかってきて「お父さん、亡くなりました。」との知らせを聞いた。
そこからどうやって病院に行ったのかほとんど記憶にない。
亡くなる日の前のこのやり取りがこの4ヶ月半私を苦しめる。ふとした時に、苦しめてくる。最近では体に不調が出てきて、しびれたり、お腹が痛くなったり、不安になって眠れなくなったり、泣きたくなったりして明日にでも死んでしまうのではないかと思ってしまうことがよくある。自分も、父のように重い病気になっていたらどうしよう、と考えてしまって、病院をはしごしては異常なしという結果をもらって帰ってくる。異常がないなら変な症状で苦しめられたくないのに…明後日から学校が始まるから、治るといいと思っている。けど、もうメンタルも体もボロボロで、私の相談相手の大好きな父もいない。これからどうやっていけばいいかわからなくて、辛い。
経験談はそれぞれの投稿者の個人的な価値観や感じ方をそのまま掲載しています。一部、リアリティのある描写や強い価値観が含まれるため、読む人にとっては負担等を感じる場合もあります。各自の判断で閲覧してもらえるようにお願いします。
ただの高校生なのに
感想2
文章を読ませていただいて、感覚の鋭い方だという印象をもちました。友達や家族とのやりとりから、あなたは言葉にされた以上に他人から意思のようなものを感じられるのかなと思います。また、それによって傷ついてしまったり、不安が大きくなったりすることもあるのではないでしょうか。
感想3
身近な人が亡くなる悲しみや虚無感は想像以上のものだと思います。同年代のお友達や周りに理解してくれる人がいなく一人で抱え込むしかなかったとありましたが、経験談を送ってくださったこと感謝致します。あなたが抱いている感情とは少し異なりますが、私自身も身近な人(母親)を亡くしているので「自分も重い病気になっていたらどうしよう」などの不安なお気持ちになることは想像できます。体調も不調ということなので少しでも落ち着くといいなと感じます。
感想4
高校生という多感な時期に、相談相手で大好きだったお父さんをがんで亡くされた経験を教えていただき、きっと心に穴の開いたような、消えることのない悲しみがあるのだろうと想像しました。
心身に不調が出てきているのは辛いですね。学校が始まって少しでも落ち着くことができればいいなと思います。もし不調が続くようなら、高校のスクールカウンセラーや保健室の先生に相談してみるのも良いと思います。
感想1
今なお辛い経験を文章にして、送ってくれてありがとうございます。
送る気持ちになったということは、表現したい気持ちや、誰かに読んでもらいたい気持ちがあるのだろうと推測します。それとも、お父さんに伝えたい気持ちを書いておきたかったのかもしれません。
今回、書いたことがあなたにとって少しでも役に立つといいなぁと思います。それとは別にあなたの書いたものはこれを読むいろいろな人たちにそれぞれの意味で何かしらの役に立つことと思っています。
自分ではどうにもできない心のダメージは簡単にどうにかなるものではないと思いますが、お父さんに大切にされた分の力はあなたの中にあるはずなので、時間はかかるかもしれませんが、少しずつ先に進んでいけると思います。こうして経験を書いて送ってくれたことがその力の一端を表していると思います。