お知らせ

つらチェック結果の解説と背景にある社会の課題について

お知らせ・お願い

つらチェックはあなたがこれまで生きてきた中で身に付けてきた考え方や感じ方、価値観を参考にして、「死にたいのもと=生きづらさのもと」を点数でわかるようにしたものです。

あなたの中にある「死にたいのもと=生きづらさのもと」について、チェックリストを通じて、見えるように外に出して(ちょっと難しい言葉で課題の「外在化」と言います)、それについて改めて考えてみる機会をつくるものです。

外在化された課題はあなた自身の中から出されたものですが、同時に社会があなたの中に内在化したものでもあります。

私たちは社会が私たちの中に内在化させたものを取り出して、見つめなおすことで、少しでも生きやすい社会づくりを目指したいと思っています。

Twitterの見守り事業や生きづらさを抱える若者たちの支援など、当事者との関わりや参画の中で、把握してきた実態をもとに作成していますが、あくまでも生きづらさや苦しさを理解するための「目安」「手がかり」として活用してもらうもので、断定したり、決めつけたりするものではありません。

カテゴリーごとの点数

各カテゴリーの点数の幅は以下のようになっています。

Categoryの左側に並んでいる願望の点数から、右側に並んでいるポイントを引いたものが、ギャップとなります。

Category4の傷つき体験から抜けたい願望と、Category5の常識度合いは、最高が20点です。

Category願望そのものの存在願望や要求をかなえやすくする要素ギャップ
1 愛し、愛されたいプライベート充実願望愛嬌ポイント(A-B)点
(最高20最低-10)
A点(最高10最低0)B点(最高10最低-10)
2 社会に貢献したい仕事成功願望世渡りポイント(C-D)点
(最高20最低-10)
C点(最高10最低0)D点(最高10最低-10)
3 優しい世界で生きたいユートピア願望鈍感ポイント(E-F)点
(最高20最低-10)
E点(最高10最低0)F点(最高10最低-10)
4 安全、安全がほしい傷つき体験から抜けたい願望セルフケアポイント(G-H)点
(最高30最低-10)
G点(最高20最低0)H点(最高10最低-10)
5 普通でいなくてはならない常識度合い
I点(最高20最低0)

総合点について

90問の質問の回答の結果をまず「総合点」として表示しています。

点数が高いほど「生きづらい」可能性があると言えます。

もっとも生きづらいと思われる最高点は110点でもっとも生きやすいと思われる最低点は-40点です。
これまでの試行から推測して、現在も死にたい気持ちやしんどさと付き合っている人はおおむね40点以上になるようです。
かなり過酷な状況にある人、過去につらい経験をたくさんした人、今も常に死にたい気持ちを抱えて苦しんでいる人などは60〜70点代、また80点代の人もいます。

点数の高さは社会生活の困難さ(特に周囲から見た評価)とはあまり関係がありません。
なぜなら、生きづらさのもとを抱えていても、何とかじっと我慢して周囲にはわからないようにする人もたくさんいるからです。
依存行為や代償行為で埋め合わせしたりしながら、家、学校、職場などで周囲に気づかれないように頑張る真面目な人たちこそ点数は高くなります。

また、総合点にはカテゴリー5の「常識への強迫性」のポイントが合算されていて、常識や普通を受け入れている人も高くなるため、自覚や見た目の生きづらさに直結しているわけではありません。

悩みやストレスをあまり感じずにいる人も10〜20点前後になることも多いです。おそらく平均的には20点ぐらいだろうと思っています。10点以下、マイナスの点数になる人は生きづらさはそれほどないだろうと思います。

ただし、点数が低く「生きづらさを感じにくい人」にも二種類が考えられます。
詳しくは次の「モードについて」で説明します。

モードについて

次に「理想と現実の状況」から人生を4つのモードに分けて説明しています。

「ハードモード」は理想が高いけれど、現実が厳しい人

「リア充モード」は理想が高いけれど、理想に近づく条件や力がある人

「マイペースモード」は現実が厳しいけれど、理想をあまり感じない人

「イージーモード」は理想をあまり意識しないけれど、力や条件が備わっている人

ということになります。

総合点が40点以上になるとほぼ「ハードモード」になりますが、30点前後であれば、「リア充モード」「マイペースモード」の人が混ざっていますし、10点以下の場合には「リア充モード」「イージーモード」が混ざり合います。

点数が高めの「リア充モード」の人は、今は充実していると思える半面、ストレスや生きづらい自覚があったり、過去の辛い経験から何とか這い上がったりした人も含まれると思います。

点数が低めの「リア充モード」は生きづらさとは無縁で充実した生活を送っていることが多いでしょうが、病気やアクシデントに脆く、危機の事態に見舞われた場合はかなりショックを受け、一気に強く死にたい気持ちになってしまうリスクがあります。

「マイペースモード」「イージーモード」の人は基本的に理想や要求が高くないので死にたくなるリスクが低いと言えます。
ただし、「マイペースモード」の中にはひねくれ者や素直ではない人、本当は理想や願望が高い(高かった)けれど、現実的にたくさん諦めてしまって希望を低く見積もる人(内心の理想が隠れてしまっている人)が混ざっている可能性があります。
そういった人はおそらく相談するのが苦手だったり、自分のつらさを見ないようにしたり、それをごまかす行為(主に依存行為など)が常態化している場合もありますので、「隠れハードモード」と言ってもいいかもしれません。

正真正銘のマイペースモードの人は身近な理解者や人付き合いの調整で正にマイペースに生きられますが、ひょっとしたら周囲が困っていることもあるかもしれません。

隠れハードモード寄りのマイペースの場合はリア充モードの人と同様に想定外のアクシデントには脆い可能性があります。いざという時のために相談できる人、理解者を確保しておきたいものです。

最後にもっとも「死にたい」から距離のあると言えるのが「イージーモード」の人です。
現実を受け入れる力や余裕がある人たちですが、かといって野望や欲も多くありません。閉塞感や格差が広がる社会において、周囲にあまり流されず、自分の感覚や思考を貫く人だと推測します。

カテゴリー別の傾向について

カテゴリー別の傾向はそれぞれのチェック結果が表示された際に詳しく説明していますが、全体の傾向として補足の説明をします。

カテゴリーは5つありますが、「1と2」、「3と4」、そして「5」は別の切り口から生きづらさを分析しています。

まずは「1~4」について説明します。
結果の表の左側に並んでいる「願望や要求の高さ」に注目してみてください。

カテゴリーの「1と2」の願望はあなた自身の「願いや理想、生き方」が反映されます。自ら設定しているハードルと言っていいと思います。

それに対して、「3と4」はあなたを取り巻く環境が「要求してくる指令や適応」が反映されます。周囲から置かれたハードルと言えます。

ただし、「1と2」のハードルは確かにあなた自身が置いているハードルではあるのですが、実は「内在化」と言って、影響力のある人から繰り返し言われ続けてきたことや周囲の人たち、社会からのプレッシャーで「思わされている」側面があるので、一概に自分で置いたハードルとも言い切れないところがあります。

少し厳密にいうと、人からの影響や周りのプレッシャーも踏まえて自分で置いたハードルと言えるかもしれません。
したがって、支援や人との関わり、社会参加によって、これらのハードルも下げることができると考えています。しかし、同時に支援など影響力の強い人との関わり次第では、逆にハードルが上がってしまうこともあります。

それに対して、表の右側に並んでいる数字「生きやすさポイント」はそれらのハードルを越えるために必要な力がどれだけありそうか示しています。
点数が高いほどハードルを越えやすい可能性があり、低いほどハードルを越えることが難しいと言えます。
これらはどちらかというと個性、特性によって限界はありますが、支援や学習機会のよってポイントが上がる可能性もあります。
特に強い個性や特性でこれまで理解されたことがない(誤解をされてきた)人や、家庭、学校などの環境が悪すぎた人などは伸びしろがあると言えます。
つまり、努力や工夫で伸ばせるものと、生まれつきの個性で伸ばすことが難しいものがあるのです。伸ばせるものを見極めて、伸ばすような工夫をし、伸ばしにくいものは現実を受け止めてカバーやフォローをしてもらえる環境調整を行うことでハードルを越えやすくなります。

いずれにしても、一人で簡単にできるものではないので、手助けしてくれる人を見つけることが大切になります。(※理解者や手助けが広がることの必要性)

5はまた違う切り口で、いわゆる同調圧力や常識にどれだけ影響を受けやすいかを表しています。
点数が高いほど、常識のプレッシャーを強く感じているか、自然に常識に適応していることで他の人にも押し付けるリスクがあると考えることができます。

これも1、2と同じように自分自身で身に付けた常識なのか、周囲から強い影響を受けた常識なのかによって意味合いは異なりますが、日本社会の価値観や自殺の背景などと探っていくと、どちらかというと「思わされている」「圧力」が大きいと推測されることから、自殺願望や希死念慮の社会的課題の一つとして「1~4」の項目とは別に設けました。

私たちは「1、2」の願望と「5」の点数の高さは社会適応が過剰に求められる生きづらい日本社会に特徴的な課題だと捉えています。(※同調圧力や~すべき、~しなければならないプレッシャーの強い価値観の問題)

プライベート充実のハードルと社会貢献のハードル

カテゴリーでもう少し詳しく見てみます。

自分が置いたハードルでは1はプライベート充実のハードル、2は社会貢献のハードルと言えます。

それぞれについてどれの程度の目標設定をしているのか、充実を望んでいるのかが表れます。

おそらく、仕事優先の人は2が高くなり、家庭や交友関係、恋愛や趣味が優先の人は1が高くなると思います。
どちらも大切にしたい(大切にしなければならない)人はどちらも高くなります。

ここで大切なのはその願いが「本当の意味でそうしたいと願っていることなのか?それとも、しなければならない、そうじゃないと価値がないと焦っていることなのか?」という見極めになると思います。

義務感や焦りがあるとしたら、ハードルを下げることや変えることもできると思います。願いそのものは急には変えられませんが、多様な生き方に触れることで見方やハードルの置き方が変わることもあるかと思います。(※多様な価値観が認め合える社会の必要性)

プライベートのハードルを越えるための力として「愛嬌ポイント」を設定しました。

周囲の人と良好な関係を作ることにプラスに働きそうな要素をチェックしています。

パブリックのハードルを越えるための力として「世渡りポイント」を設定しました。
仕事や与えられた役割をこなす小器用さや適応力などをチェックしています。

これらの力はいずれもセルフチェックすることから、自己評価のくせが反映されます。

自己評価が高い人は数字よりも実際のギャップが大きい場合もありますし、謙虚で自己肯定感が低いタイプの人は実際よりも数字が低く出てしまうため、ギャップが大きめに出てしまいます。

自己評価に自信がない人は自分のことをよく理解している人に自分がどう見えるのか、確認してみてもよいと思います。(※個性や特性の相互理解や相互承認の必要性)

これらによって、あなたの公私の生活において、あなたが設定しているハードルの高さと、それを越えるために備わっていそうな力を数字にし、ハードルを目の前にあなたがどれだけ希望や充実感を感じているのか、あるいは絶望と諦めをしているのかをイメージしています。

カテゴリー1のギャップが大きい人は家族との離別、失恋、孤立、いじめなどにより強いショックやダメージを受けると推測できます。失恋や離婚、離別、モテないこと、友達がいないこと、結婚できないかもしれない等で絶望感を抱き、死にたくなるかもしれません。

カテゴリー2のギャップが大きい人は学業や仕事のつまずき、病気や障がいなどによる離職などの社会的役割の喪失などで強いショックや不全感を受けると推測されます。不登校、受験や就活の失敗、リストラ、燃え尽き症候群、職場での不適応や不本意な異動などのミスマッチなどが苦しく、活躍できないのなら死んだ方がまし、生きている資格がないと思ってしまうかもしれません。

環境のハードルとトラウマのハードル

次に3と4を見てみます。

これは「周囲によっておかれたハードル」であなた自身の努力ではなく、環境や条件をチェックしています。

3は現在のストレスを示していて、そのストレスにどれほど対応や適応を求められているのかということがわかります。高い人は今ストレスが多く、ストレスへの対応が求められている状態ということになります。

寄せられる声を見ると、家庭、学校、職場など主な所属先のストレスが非常に大きく、なおかつそれ以外の選択肢がない閉塞感が強く感じられます。

つまり、環境のハードルがいかんともしがたく、高くそびえてしまっているイメージです。(※社会全体のストレスを下げる、労働環境やライフスタイルを変化させる必要性)

現実は厳しいですが、環境のハードルは環境を変えることによって大きく変化する可能性があるものです。転校、転居、転職などで点数を下げることができます。

しかしながら、経済力がない女性や子どもや障がいのある人が家を出たり、学校を自分で選択する権限を持たない子どもが学校を変えたり、収入が不安定な若者が職場を変えることは容易ではありません。

選択や決定することがまったく許されない場合や暴力や抑圧で力を失っていれば行動することは極めて困難で、時には願いをもつことすらできなくなります。

安心できる居場所がない女性や子ども、若者たちが抵抗や批判をされずに安全に家や学校、職場から出るすべはあまりにもないのが現実なのです。

にもかかわらず、どうにか逃げ出したい場合は、出会い系で探す、風俗や過酷労働など搾取を覚悟で身を寄せるしかないのです。

私たちはそうした現実を痛感し、早急に合法的な家出場所を制度として作るべきだと言い続けています(地元釧路では自宅から出て暮らせるところをモデル的に運営しています)。

ただし、長い間我慢をしていることで環境が変わってもすぐには軽くならないことがあります。

それがカテゴリー4の問題につながります。(※家庭や学校に居場所がない場合の他の居場所や所属の選択肢が認知され、広がる必要性)

環境のハードルを超えるための力として「鈍感ポイント」を設定しています。

これまで活動をしてきて、生きることがつらい人たちの中にはかなり「感じすぎる人たち」がいることがわかってきました。

近頃はHSPと呼ばれる概念も登場していますが、人によって環境から受けるストレスの度合いが随分と異なるようです。これまであまり注目されてこなかったことですが、ストレスに対する感受性についてチェックし、環境のハードルを理解し、状況を把握することで、生きづらさを分析できるようにしました。

「鈍感ポイント」は残念ながらあまり途中からアップさせることが難しい項目ではありますが、苦手がわかることで環境の選択には役立てることができると思います。(※ストレスへの耐性は個人でかなり異なることへの理解の必要性)

4はトラウマの存在と影響について確認しています。

高いほど今もトラウマに苦しめられていて、自分の意思とは無関係に過去の経験が今のあなたをコンロトールして、あなた自身が何をしたいのか、何を求めているのか感じたり考えたりすることを邪魔していると思われます。

過去のダメージから派生するトラウマからの要求と付き合わなければならないので、多くのサポートが必要ということになります。

カテゴリー4の項目は無縁な人はまったく無縁ですが、影響のある人は長い期間にわたりその深刻さに悩まされることもあり、かなりの個人差があります。

ただし、これまでの死にトリに寄せられる声を見ると、そうした経験を持っている人は決して少なくないと思います。それは精神科のお医者さんたちや臨床現場で生きづらさを抱えた人たちと関わっている人にとっては共通して感じていることだと思います。(※潜在的な暴力被害の実態把握の必要性)

背景としては虐待やDVなど家庭の中にある暴力の存在がありますが、それは単に親が悪いなど暴力をふるう個人の問題ではなく、社会全体が所得の再分配などの社会保障や福祉の制度の問題から、支え合いのマインドといった教育やコミュニティの問題に至るまで、ひずみが生まれている構造的な問題が大きいと考えられます。

人々を追い詰める様々な発想や仕組みが生活者を追い詰め、社会の中でもより弱いところにそのストレスが向けられてしまいます。

これはとても悲しくあってはならない現実です。弱いところにストレスが向けられるような構造は是正が必要ですが、そのような現状があまり理解されていないため、進んでいません。

つらチェックがそうした実態を明らかにするために役立てたいと思っています。(※暴力や抑圧の構造的な理解と対策の必要性)

トラウマのハードルを越えるための力として「セルフケアポイント」を設定しました。

つらい過去の体験があっても、支えてくれる人がいたり、気の合う出会いがあったり、受け入れてくれる場があったり、リフレッシュ方法があったりすると対応ができます。

セルフケアポイントは支援や人とのつながりでアップさせることができる項目だと考えています。

社会の中に多様な支援や人とのつながりの選択肢、多様な価値観を認め合う文化の広がりなどが用意されることでアップできる可能性が高くなります。(※支援のバリエーション、使いやすい仕組みなどの必要性)

常識のパワーと影響

最後にカテゴリー5は常識の影響力をチェックしています。

私たちが普段何気なく信じている「常識」「普通」「当たり前」が知らないうちに自分を含めて誰かの生き方を否定したり、追い詰めたりしていることがあります。そのことに少し気づくことができるようにしています。

基本的にどんな常識を基準に生きるかは個人の自由ですが、無自覚な状態が少数者や社会的に弱い人たちを追い詰める構造があるようなので、改めて振り返ることができるようになっています。

常識の点は多様な人たちに出会うことでかなり下がると思っています。

今の日本では家庭の単位が小さくなったり、近所づきあいや親戚づきあいが少なくなったり、学校は同族集団を基本にしているため、多様な人たちと出会う機会がかなり減っていて、価値観が固定化されてしまうリスクが高いと考えています。

子どものうちから、できるだけ多様な人たちに出会い、価値観に触れる環境整備が求められています。(※多様な価値観に触れる機会の必要性)

以上、つらチェックについての解説と作成に至った経過や今の社会の課題についてお伝えしました。今後も気付いたことなどあれば、発信したいと思います。

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