虚無をもがく

神奈川県/19歳/女性


私は私の全てを書く。覚えている限り、過去から。今日見た大好きだった先生に抱きつく幸せな夢を忘れたくなくて。この過去がない限り、あの先生はそこまで好きにならなかったから。ぐちゃぐちゃで意味不明だろう。けど、それでも書きたいから書く。

私はきっと生まれたときからおかしな子だったのだろう。大きな音に必要以上に驚き、集団行動が酷く苦手だった。幼い頃の記憶はそれぐらいしかないが、何かが少しずれていた。

それを明確に認識したのは、多分小学一年生。私には二人姉がいる。どちらともコミュニケーションを取るのが苦手で、特に次女は頑固な気質が災いしてかいじめられていたようだった。「普通」ではない上にいじめている相手の妹となれば、格好の標的でもあったのだろう。姉ほどではないが、時々暴言が飛んでくることは日常になった。

鮮明に覚えているのは、集団登校の時。長女の一つ年下の上級生がニヤニヤしながら私に何かを投げつけた。
大量のひっつき虫だった。子供の些細なイタズラ、何するんだ!と怒るのが普通なのだろう。何が何だか分からない私はその場で泣きわめいた。必死でそれを取り除いてくれる姉を見ながら、ずっと泣いていた。そのあとどうなったか、結局学校に行けたのかすら覚えていない。ただ分かるのは、上級生と私の間に何か大きな溝があったこと。

二年生になって、私の生活は大きく変わることとなる。卒業した長女に変わって、集団登校を引っ張るのは件のひっつき虫の上級生。一番後ろには、次女がいた。この年になると、一人転校生がやってきた。めったにそんなことのない学校は目に見えて色めきたち、みんながみんな転校生の回りにひっついた。私も転校生と話したくて、色々話した気がする。けど、登下校の度にいじめられ、物を投げられる姉と、その妹は受け入れていけないと、成長したクラスメイトは理解してしまったようだった。


今覚えば可愛らしい嫌がらせをしてくるクラスメイトと大切な幼馴染みだった子を見て、私の記憶は少し飛ぶ。私はいつの間にか、学校の問題児になった。体調が悪いと、家に帰り学校を行くのを止め始める。それを続けるうちにバレて、強制的に学校に送られる。

学校に響き渡る私の叫び声。
行きたくない、行きたくない!

お構い無しに車から引きずり出され、大人に担がれて保健室にぶちこまれる。そんな日々が続く。何があったのか分からないが、教室の配膳台の下で泣いているときもあった。そんな中でも、おはようございますという学校生活が始まる声が聞こえ続けていた。

そんな生活が、一年、二年と続く内に、私の手は少しだけおかしくなった。お祭りで手にいれた鏡を割った破片で傷つけた傷。無理やり針を突き刺し、ボコボコに腫れた手の甲。逃げたい、どこかにいきたい、希死念慮なんて言葉を知らない子供は、逃避願望を抱えながらひたすらに自分を傷つけた。きっと、学校に行きたくないもあったのだろうけど、私はこの頃からもう生きたくなかったのだ。

中学生になっても、相変わらず私は泣き叫び、髪を引っ張られながら車に乗せられ、学校に行かされていた。そんな生活が少し続いた後、担任が言った。
相談室へ行くか?
私のクソッタレな学校生活が少しだけ救われる言葉だった。
そこは、教室に行けない子がそこで過ごしながら、「普通」に戻れるようにする場所で、そこで過ごしている間は少しだけ安定した精神を保てた。
けど、あくまでも学校の一部。大嫌いなものの足音はすぐに来る。来たくないだろうに来る班の子達。教室には行かないと断り続ける日々。「普通」に生活している子達の目がどうしようもなく、おぞましくて私はその夜カッターを取った。
死にたいを理解した、消えたいを理解した。

私は、「普通」が分からない。「普通」をできない。それがどうしようもなく許せなくて、自分の存在価値を見いだせない。「普通」が出来なければ意味がないのだ。

話は唐突に飛んでしまうが、今だってそうだ。
私は今、何故か「普通」の人と暮らしている。愛してくれているらしい。その言葉には実感できない。嬉しくは思う。けど、「普通」ではない私は酸素を消費する意味のないたんぱく質でしかないのだ。

家事さえこなせずに、恐怖におびえ続けるなら、消えたい死にたい。ドアノブに紐をかけて、ギリギリと首が絞まるのを感じながら、真っ黒になってそのまま消え去りたい。
けど、そうしたらあの人は追いかけると何度も言う。私を縛り付けていく。殺したくない、けど死にたい。
生きるのが怖い、けどあの人を殺すのが怖い。そんなジレンマをもがき続けている。

感想1

体験談、ありがとうございました。内容にも胸を打たれる部分が多くありましたがそれ以上に、とても洗練された美しい文章を書く方だな、と思いました。これだけ無駄がなく、必要なところはきちんと情景として浮かび、過剰過ぎない感情表現やエピソードや全体の流れ方は、それなりに文章を書いてきた方か、もしくはそれほど自分自身や「普通」について相当考えてこられたのだろうと思います。エピソードや表現の方法、からしてテーマはきっと「普通」になれなかった自分と、「普通」を強要してくる社会との戦いなのかと私は感じました。泣き叫ぶあなたのことを、周囲のオトナは「泣き叫ぶあなた」として扱い、誰も「あなた」自身をみていない、何故泣き叫ぶのか、幾ばくかでもそんな風に見てくれたオトナはその先生くらいで、他のオトナはあなたから「泣き叫ぶ」を取り除き「普通」にさせようと躍起になっているように見え、当時の泣き叫び自分を傷つけることで何とか保っていたあなたはまだ心のどこかで泣いていて、そばに行って抱きしめてあげたいくらいです。

「普通でなければ意味がない」という言葉がとても私には刺さりました。その言葉はまるで私が長年苛まれていたことと一語一句違わず、他人ごとではなく痛みとして刺さりました。

世の中は、「普通」が好きですね。子供時代ほどではないですが、普通から外れるとスポイルされたり、社会生活が潤滑に進まなかったり、私自身どれほど手に入らない「普通」を求めてさまよいのたうち回ったかわかりません。今ももしかしたら求めているのかもしれません。

恐らくあなたは、生まれ持った能力としてもともと感性や直感が鋭く、人よりいろいろなものが見えたり、感じたりする方ではないでしょうか。あるいは1聴いたら10理解できるような世の中の見え方がしたりですとか。確かにその能力を持ったまま「普通」に「社会」で生きるのはかなり苦痛で困難かと思います。それこそ自傷でコントロールせざるを得ない程度には。しかし逆の角度から見て、それらをうまく使いこなせるようになるとそれは他の人にはない特別な能力や才能となり、相当うまく機能し、「普通」の人を上回り「特別」な「ほかの人には出来ない」能力を発揮するのではないか、と私は思いました。今は無自覚かもしれませんし、非常に使い勝手の悪い能力かと思いますが、何かのタイミングで使いこなせるようになると、少し息をするのがラクになるのではないか、どころか、あなたの能力によって救えるものが出てくるのではないか、と私は本気で感じました。

私自身「普通」になりたくて仕方がなかった人間ですので説得力が薄いかもしれませんが、「普通」については普通の人に任せることとして「普通でないからこそできること」を発掘し、自身に対してあるいは社会に対して使っていただけたらと思います。

もしよければ、まずそのままこれからも、文章を書き続けてみてはいかがでしょうか。内容も、そしてそれをこれほど丁寧に表現され、伝わってくることに私はとても感動しました。

感想2

強烈な過去の記憶が今も頭の中に残り、現実と過去、夢の狭間でもがいているのだなと解釈しました。どの経験もあなたの意志に反して強いられたもので、受けたダメージは計り知れないと思います。そのダメージに今も苦しみ続け、安心できる時間は少ない(もしくはない)のではと想像しています。なので、「普通」であることを強いられない空間や時間があってほしいと、勝手にも思ってしまいました。

「普通」を強いられるような経験をしてきたからではないかと推測しますが、あなたは「普通」なるものを明確に感じているようです。死にトリでは、「普通」や「常識」が死にたいを強める要因になるという仮説を立てています。そこで、あなたの感じている「普通」がどんなものなのか、できればもう少し教えてほしいです。「普通」がわかれば、社会を見直すための大切な視点になると考えているため、ぜひお聞かせください。

感想3

今日見た幸せな夢を忘れたくなくて、この経験談を書かれたのですね。ただ、現実には夢のように幸せというわけではなく、とてつもない恐怖におびえて、ずっと死にたい・消えたいと感じているのが伝わってきました。あなたの気持ちを無視して強引に学校に連れていかれたら、生きていたくないと感じるのも当然だろうと思いました。小学生の子どもに、生きていたくないと感じさせてしまう、厳しい現実をただただ受け止めることしかできず、申し訳なく思います。子どもは希死念慮などの言葉で説明できないので、泣き叫んで、自分を傷つけて、サインも出していたと思うのですが、それなのに「普通」に合わせることを強制するような大人や社会というのは、子どもの人権も守れない異常な社会だと思います。社会で「普通」だとされていることは、実はもう古くなっていたり、少数派になっていたり、頭の中で作り出した幻想でしかなかったりすると思います。あなたがマイノリティ性を持っているとしても、存在価値がないことは絶対にないと思います。少数派だからこそ生かせる才能や感性を持っているはずだと思います。ただ、それを否定され、押し込められてきただけで。

死んでしまったら後を追う、と何度も言われると、あなたが背負うはずのない相手の生死まで背負わされているように感じるのではないでしょうか。相手はあなたを苦しめるつもりで言っているわけではないと思うので、率直に「あなたを殺したくない」という思いを伝えてみるのはどうでしょうか…?

また、夢の中の話でも、現実の話でも、お聞きしてみたいと思っています。