北海道 中谷衣里さん

こんにちは。古堂達也さんからバトンをいただきました中谷衣里といいます。私は北海道札幌市に住んでいます。仲間と共にLGBTQなどセクシュアルマイノリティ[1]を支援するボランティア団体[2]を運営しており、セクシュアルマイノリティの方が気軽に集まれる居場所作りや、高校・大学へ性の多様性を伝える為に授業をしに行ったり、性のあり方に悩む10代20代の方を対象としたSNS相談[3]を運営しています。

今回はSNS相談「にじいろtalk-talk」のお話をしようと思います。

1.SNS相談「にじいろtalk-talk」って?

性の在り方(セクシュアリティ)に悩む若年層のセクシュアルマイノリティ(LGBTQ)の方を対象としたSNS相談です。今はコミュニケーションアプリ「LINE」を使って月に2回(18:50~21:50)相談を受け付けています。

相談は無料でできますし、相談した内容が誰かに知られることはありません。相談業務とセクシュアルマイノリティに関する研修を受けた、セクシュアルマイノリティの当事者を含む相談員が相談をお受けしています。

「にじいろtalk-talk」を始めたきっかけ

話は15年前くらいにさかのぼりますが、私は中学生の時に自分がレズビアンだと気付きました。高校生になってレズビアンであることを友達に伝えたら、勝手に同級生にバラされてしまいました。話したことのない同級生までも私がレズビアンであることを知っていて、好きになる性別がみんなと違うだけなのに、同級生から見ると私は“すごく珍しい同級生”になっていました。学校の先生からは「早くレズビアンをやめないと、将来結婚できないぞ!」と異性愛が当たり前の価値観を押し付けられて苦しい思いをしました。両親は私がレズビアンであることを絶対に受け入れたくなくて、「レズビアンであることを隠すように」厳しくしつけられました。

最初は、同性愛を差別する人や偏見を持っている人が悪いんだ!と思っていましたが、だんだんと「私がレズビアンであるから嫌な思いをするのかな?私が悪いのかな?」と思えてきました。

そのうちに「なんでみんなみたいに“普通”になれないんだろう。レズビアンである自分が嫌いだ!」と思うようになってきました。

大学ではすっかり自分のことは大嫌いになっていて、周りにレズビアンであるとバレないように細心の注意をはらい“みんなと同じ男の子が好きな女の子”を演じていました。本当の自分を隠すために嘘を嘘で塗り固めたり、全然興味はなかったけれど女性の間で流行っている男性の芸能人を一生懸命探したりしました。そうするとどんどん自分が何者なのか分からなくなって、外に出ると息苦しさを感じるようになりました。20歳くらいが人生一番のどん底で、「このまま生きていても良いことないから、早くこの世からいなくなりたいな…」と思っていました。

そこから色んな人との出会いや助けがあって、セクシュアルマイノリティの支援団体に入りました。数年前のことです。私が高校時代だったころから10年経っていましたが、支援団体で出会った高校生も私と同じような苦しい気持ちを周りに隠しながらなんとか生きていることを知りました。

例えば全国各地でパートナーシップ宣誓制度ができていたり、教科書にもセクシュアルマイノリティが載るようになったり、世の中は少しずつ良くなっているように見えるのに、10年前私が苦しんでいたことを今の高校生がまだ苦しんでいるなんて、、、とショックを受けました。

それで、仲間と試しにLINE相談を始めてみたら、毎回全国から何十人もの10代20代が誰にも話せなかった悩みを相談しようと「にじいろtalk-talk」に殺到しました。

2.「にじいろtalk-talk」で向き合った死にたい気持ち

「にじいろtalk-talk」にも「死にたい」とか、「生きるのがしんどい」とLINEを送ってくる相談者さんがいます。お話を聴いていて感じるのは、“死にたい気持ちの裏には、死にたい理由がある”ということです。理由も様々ですし、それを上手く言葉にできる時もあれば、できない時もあります。

でも、共通していえるのは、死にたいと思うのはその人が弱いからではなくて、社会の制度や周囲の人々がその人を居ない者にしたり排除(差別)しようとすることが元々の原因であることがほとんどです。

・セクシュアルマイノリティとして生きていくために必要な情報が得られない

・色々な支援制度や仕組みを利用できない

・セクシュアルマイノリティの人が周りにおらず孤立している

・生き方のロールモデルがいない

・正しく自分のセクシュアリティを学ぶ機会がない

などの環境にいると、どんどんと自分が生きづらい原因を自分自身に向けて、自分を責めるようになってきます。“どうして普通(みんなと同じ)になれないんだろう…”、“みんなは当たり前にできてるのに…”という気持ちが生まれてきて、自分を否定するようになります。

そんな自己否定感がどんどん膨らんでいって、「死にたい」とか「生きるのがしんどい」に繋がっていくのかな、と考える場面がしばしばあります。

3.ここまで読んでくださった方へ

ここまで読んでくださってありがとうございます。

私がこれを読んでいるアナタに伝えたいことは、「独りじゃないよ」ということです。とは言っても、“いや、自分は独りだよ”と思う方もいるかもしれません。私はアナタの“独りな気持ち”や“死にたい気持ち”を否定しません。でも、もし死にたい気持ちとひとりで向き合うのがつらくなったら、誰かに話してみるのもいいかなと思っています。

もし自分の周りに安心して気持ちを話せる人がいないなら、ネットとかSNSにいる人でもいいです。自分が少しでも自分らしくいられたり、息がしやすい場所で死にたい気持ちを話してみてほしいなと思います。

1回話すだけで死にたい気持ちがすっかり消えてなくなることは(多分)ないし、画期的な解決策が見つかることもないかもしれないけど、“話して良かったな”とか“少しだけすっきりしたな”と思えることがあるかもしれません。そこからまた、アナタが少しでも生きやすくなる為にどうするか、ゆっくり考えていきましょう。


[1] セクシュアルマイノリティとは、これが“普通”又は“多数派”とされる性のあり方を持たない人の総称。代表的なセクシュアルマイノリティとしては同性愛者やバイセクシュアル、トランスジェンダーなどがあるが、他にも様々な性のあり方を持つ人々が存在している。

[2] NPO法人北海道レインボー・リソースセンターL-Portについての詳しい情報は http://www.l-port.org

[3] セクシュアリティ専門SNS相談にじいろtalk-talkについての詳しい情報は https://twitter.com/LLinq2018